『別々の景色』

一年後、かめさんは6合目付近にいました。
下腹やお尻に付いていた脂肪は減って、ウエストも高い位置でくびれてきました。
肌や筋肉は、昔のように張りが戻ってきました。
かめさんは若くきれいに変わって来ました。


その頃ウサギさんはスタート地点より後方にいました。
一度すごく頑張って4合目まで行ったことがあったのです。
頑張って、頑張って食事を減らしました。
だって好きな人ができたから。
ずいぶん細くなって洋服も2サイズ下が着られるようになりました。
でもお尻は思ったほど減らなかったけどね。

結局その恋は終わってしまい、気付けばスタート地点より20m後方。
失恋のストレスは食べ物に行っちゃうんだよね。
んっ?あなたはお酒?

「野菜食べなきゃ。」
と思うんだけど、
分かっているけど、
甘い物がいっぱい食べたいんだ。
いっそお菓子の家に住みたいんだ。
食べ続けちゃうよ。
どうしたらいいのか分からない。
食べ方が分からない。
ウサギは摂食障害で苦しんでいました。





『ウサギの子ども時代』

ウサギさんはのどかな田舎に生まれました。
お父さんもお母さんも優しくて、
ウサギはみんなと食事をするのが大好きだった。
テーブルには、畑で採れた野菜をいっぱい使ったお母さん自慢の料理が並んでいて、
その日あった話を家族はニコニコして聞いてくれた。
ウサギは毎日幸せだった。

そんなウサギも大人になり始めると都会にあこがれ田舎を離れた。
目に映るもの全てが新鮮で、時間を忘れて遊んでいた。

食べ物も田舎の味で育ったウサギには都会の味は驚くものだった。
ステーキ、パスタ、バイキング。
味の濃い料理はお酒も進む。

コンビニだってある。
お菓子におにぎり、カップラーメン、デザート、コーラ。
気付けば一日野菜を食べてない。
そんなことはお構いなく、
都会の生活を満喫していた。





『ウサギの苦悩』

しばらくするとウサギは自分の体型の変化に気付いた。
「あれ?洋服がきつい?」
ウサギは少し太った。
「あっ!戻さないと。」
ウサギは食事を減らしました。
「いつもの半分ぐらいかな。我慢。我慢。
水飲んで空腹紛らわしておけばいいんだから。」

何日か頑張った。
ある日友達から食事に誘われて、
「久しぶりの外食。
まぁ、今日ぐらいはダイエットお休みしょう。」
で、すまなかった。

「あ〜、戻っちゃった。」
ウサギはもう一回挑戦する。
「1日の食事のうち2食をこの栄養ジュースに置き換えて、」
はい、スタート。
「あっ美味しい。このジュース。」
何日か過ぎると、
「飽きた〜。おせんべい食べた〜い。歯ごたえのあるもの食べた〜い。」
お菓子を我慢していたウサギはスナック菓子やデザートが主食になってきました。

次に挑戦したのは今流行の「○○ダイエット」
猫も杓子も「○○ダイエット」
アウト!
何回かこんなことをしているうちに、前よりお腹が出たような、お尻が大きくなったような気がする。


ある時、ウサギは恋をした。
「なに?このドキドキ。」
想う心は何でも出来ると思わせた。
頑張ったよ。
好きな物も我慢したよ。
ほら、きれいになったでしょ。





恋は儚い。
ウサギは毎日泣いた。
泣きながらケーキを食べた。甘いのに時々しょっぱい。
毎日ケーキを食べた。
泣きながら、泣きながら。
今日は止めよう。と思う。
止まらないんだ。
苦しいよ。